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通販市場の5.9%増と1.8%減、EC事業者が同じ売上の話として読めない理由
- EC

通販市場の5.9%増と1.8%減という二つの数字を同じ資料棚に置くと、「市場は伸びているのに、なぜ足元では減っているのか」と混乱しがちです。年度の売上目標を置く場面や、夏の前年割れを市場全体のせいにしてよいか迷う場面では、特に気になる対比でしょう。
先に答えを言うと、二つは同じ売上を別の角度から見た数字ではありません。公益社団法人日本通信販売協会が2026年8月28日に公表した年度の市場推計は、2025年度を対象とする通信販売(ECを含む)市場の速報値です。一方、同協会が8月25日に公表した月次調査は、2026年7月度に回答した企業の総売上高です。年度市場推計は事業計画で外部環境を置く材料、月次調査は足元を読む参考情報として分け、自店の売上判断は自社の受注・売上データを優先する。この順番が妥当です。
15兆4,085億円の伸びと、1,319億7,800万円の減少は並べても足し引きできない
2025年度通販・EC市場売上高調査では、2025年度(2025年4月から2026年3月)の通信販売(ECを含む)市場の売上高について、速報値が公表されました。通販の売上高は前年比5.9%増の15兆4,085億円で、金額ベースでは前年より8,585億円増です。
対して、2026年度7月度月次売上高調査は、2026年7月度の売上高を扱います。正会員377社を対象に行われ、113社から回答を得た調査で、回答社の総売上高は1,319億7,800万円、前年同月比は1.8%減でした。
見出しの数字だけを見ると、片方は増加、片方は減少です。しかし、対象期間、対象となる企業、集計の組み立てがそろっていません。ここで「年次市場が伸びたのに7月に減った」と一本の流れへつなぐと、数字そのものより強い意味を読み込むことになります。
| 見る数字 | 対象期間 | 対象と集計 | この数字から直接分かること |
|---|---|---|---|
| 前年比5.9%増、15兆4,085億円 | 2025年度(2025年4月から2026年3月) | JADMA正会員375社と有力非会員431社。会員情報、企業実態調査の売上部分の先行集計、有力非会員の推計を加えて算出 | 対象年度の通信販売市場について示された速報値 |
| 前年同月比1.8%減、1,319億7,800万円 | 2026年7月度 | 正会員377社を対象とし、113社が回答した総売上高 | 回答社の当該月の前年同月比 |
つまり、5.9%増を「2026年7月も伸びているはず」という基準にはできません。逆に、1.8%減だけで通信販売市場が縮小へ転じたとも読めません。二つの公表を組み合わせる価値は、強い景気判断を作ることではなく、期間と対象が違う数字を、自店の売上の原因説明に流用しないところにあります。
年度市場推計は物販中心、月次調査は回答113社の数字
年度の市場推計には、衣料品、雑貨、化粧品、健康食品などの物販が中心であることも記されています。通信販売全体を対象とする推計であり、ECだけの市場規模として読み替えるものではありません。
ここで、店頭に並ぶ商品を思い浮かべるように数字の札を見分けると理解しやすくなります。15兆4,085億円の札には「年度」「通信販売(ECを含む)」「物販中心」「推計」という条件が付きます。1,319億7,800万円の札には「2026年7月度」「正会員377社が対象」「113社回答」という条件が付きます。増減率だけを取り出すと、札に付いていた条件が落ちます。
自店の前年割れについて社内で説明したいとき、まず手元の売上と比べる相手をそろえてみましょう。自店の7月の前年同月比を見ているなら、月次調査の1.8%減は「同じ月を扱う別の調査」として参照できます。ただし、販売チャネル、扱う商品、回答企業の構成までは自店と同じではありません。自店の減少原因を説明する数値にはしない方がよいでしょう。
一方、次年度の計画で市場の大きな流れを置きたいなら、年度市場推計の5.9%増は外部環境を考える材料になります。ただし、そのまま自店の目標成長率に置き換える数字ではありません。年度の推計と自店の月次実績を直接比べるより、比較の目的を先に分ける方が、会議で数字の役割がぶれません。
「市場が伸びているのに自店が不調」を、急いで異常と呼ばない
2026年夏の数字が前年より弱く、「市場は5.9%増なのだから自店だけに問題がある」と結論づけたくなることがあります。けれど、今回の二つの発表は、その結論を支える比較ではありません。年次の市場推計と、回答113社の7月度月次調査は、そもそも比べる条件が違うためです。
ここで見方を一つ変えてみましょう。自店の数字を説明するときは、市場の伸び率を答えにせず、まず自店内で同じ期間・同じ集計条件の前年同期比を置きます。そのうえで、商品区分、販売チャネル、客数、客単価のどこに変化があるかを自社データで見ます。この記事が示すのは、どの項目が原因かではありません。外部の年次推計と月次調査を、その原因の代わりにしてはいけないという順番です。
たとえば、年次計画の説明では「2025年度の通信販売市場は前年比5.9%増」という外部環境を使い、足元の報告では「2026年7月度の月次調査は回答113社で前年同月比1.8%減」という別条件の参考情報として添えます。その後に自店の同条件の実績を置けば、市場全体の数字と自店の結果を混ぜずに話せます。
この二つの公表だけでは、個別の店や商品、チャネルの売上が増減した理由までは分かりません。だからこそ、5.9%増を安心材料にしすぎず、1.8%減を悲観材料にしすぎないことです。数字の向きより先に、どの期間の、誰を対象にした、どんな集計かを読む。その一手で、外部環境のニュースは自店の売上を決めつける材料ではなく、次に自社データへ尋ねる問いへ変わります。
自店の売上データの集計条件が整理できず、年度計画やサイト改善の判断へつなげにくい場合は、お問い合わせからご相談ください。
本記事は記事内で取り上げる各サービスの提供会社が提供または認定するものではありません。
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